こんにちは。
床下の湿気対策に採用されるのが、基礎パッキン工法。
大手ハウスメーカーからローコストハウスメーカーまで、採用するハウスメーカーが増えました。
彼らの説明によると、基礎パッキンによって床下の換気が劇的に改善されるとのこと。
・・・どうやらすごいらしいですよ。
しかし実際のところ、基礎パッキンの効果はどうなのでしょうか?
基礎と土台の間にはさんだりして、家の重さで潰れたりしないのでしょうか?
そこでこの記事では、ちょっとシビアぎみに基礎パッキンについて解説させて頂きます。
・基礎パッキンの特徴・種類
・基礎パッキンのメリット・デメリット
基礎パッキンは家の構造・床下環境に関わります。小さな疑問もすべて解決しておきましょう。
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この記事の概要
基礎パッキンとは?どんな種類があるの?
基礎パッキンとは基礎と土台の間にはさむ、樹脂製のパッキンです。
基礎パッキンには風の通る穴がたくさんあいており、基礎パッキンをはさむことで、床下の風通しがよくなります。
従来の基礎に換気口を開けるやり方よりも、「2倍の換気量になる」、というデータもございます。
メーカー・工事のおじちゃんによっては、
・キソパッキン(商品名)
・キャットスペーサー(商品名)
・土台パッキン(商品名)
・猫土台
・駒
などと呼ばれることもありますが、つまるところ、これら全部「基礎パッキン」だと思って頂いて結構です。
各ハウスメーカーで採用されることが多く、HPには基礎パッキン工法がさも最新技術のように紹介されています。
ですが基礎パッキン工法は、古くは「猫土台」などと呼ばれ、昔からある工法の1つです。当時は基礎と土台の間に石材・木材などをはさんでいました。
1976年に城東テクノが開発した樹脂製の基礎パッキン「JOTO キソパッキン」が、現代の基礎パッキン工法のはじまりです。
なお、「基礎パッキン」と「キソパッキン」で表記がちがうのは、
・基礎パッキン:住宅金融支援機構の仕様書の中で使われる名前。
・キソパッキン:城東テクノが開発した基礎パッキンの商品名。
城東テクノが樹脂製の基礎パッキンを開発したものの、商品名に「基礎パッキン」が使えず、「キソパッキン」とあらためた経緯がございます。
基礎パッキンの種類。
「わが社の家は、基礎パッキンを使ってますから、床下換気はバッチリです!」
とは言いましても、じつは基礎パッキンには4種類あるのですよ。
1・キソパッキン
ベースモデルと呼べる基礎パッキンは、樹脂製の正方形をしたパッキンです。
このパッキンを決められた間隔で、基礎の上に並べていきます。
基礎の上、すべてにパッキンが並ぶのではないので、パッキンとパッキンの間は、土台が宙に浮いている形になります。
2・キソパッキンロング
ベースモデルを改良したのが、キソパッキンロング。こちらは基礎の全周囲すべてにパッキンをのせるタイプです。
そのため基礎と土台がすべて接しているので、キソパッキンよりも安心感があります。
それだけでなく基礎と土台との隙間も少ないので、虫・ねずみが侵入するリスクも低くなるメリットもあります。
しかし基礎と土台との隙間が少なくなると、「風通しが悪くなるのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
ですが、ご安心くださいませ。
キソパッキンロングは、スリットタイプで風がよく通り抜けられるようになっております。
また基礎パッキンのスリットにモルタルがつかないようにする、「モルタルストップ付」もございます。
3・気密パッキン
基礎パッキンのなかには、逆に風をシャットアウトする「気密パッキン」というものがあります。
玄関・浴室など、気密化が必要な場所につかいます。
4・断熱気密パッキン
気密パッキンに断熱材がついた基礎パッキンです。
基礎断熱とあわせて使用し、床下の暖かい空気が外に逃げるのを防ぎます。
家の重みを60年支えても、0.001mmしかゆがまない耐久力。
基礎パッキンは樹脂製のスリットが多く入ったパッキン。これを基礎と土台の間にはさみます。
ですので正直いって、不安に思いませんか?
劣化したら、きっと地震がきたら土台から崩れるにちがいありませぬ・・・ぶるぶる・・・。
そこで基礎パッキンの主要メーカーである、城東テクノ「キソパッキン」の技術資料をリサーチしてみました。
城東テクノのキソパッキンは樹脂製と呼ばれることが多いものの、じつは主成分は炭酸カルシウム。そのため樹脂のしなやかさと石の強さをあわせもっております。
そのためただの樹脂のように劣化することもなく、メーカーの試験結果による寿命予測では、
という結果が出ております。
キソパッキンの耐久力を実感するには、「60年間で0.011mmのゆがみ」を体験するのが一番です。
イエス、では、指先で0.1mmを作ってください。
イエス、では、指先で0.01mmを作って・・・
ちまたには「基礎パッキンは樹脂だから、劣化する」といううわさもありますが、メーカーの試験予測を見る限り、信ぴょう性がないのはうわさの方ではないかと思われます。
参考:Joto キソパッキン 複合素材の将来(寿命)予測について
基礎パッキンのメリット
基礎パッキンを採用しているハウスメーカーのHPには、さも最新技術のようにかかれていますが、技術的には昔からある工法です。
では実際のところ、基礎パッキンにはどんなメリットがあるのでしょうか?
施工が簡単で失敗が少ない。
基礎パッキンを採用するもっとも大きなメリットは、施工が簡単なことです。
基礎パッキンの施工方法は簡単で、基礎の上に並べていくだけ。従来の換気口のように、基礎に穴をあける必要がありません。
施工方法が簡単なので、だれが・どんな風に作業しても設計通りの品質が確保しやすいのです。
簡単に施工できるからこそ、設計通りの品質が確保されるもの。簡単な施工こそ、正義でございます。
基礎を切らないので、強度を保てる。
基礎パッキンのメリットは、基礎を切らないので強度が保てることです。
従来の床下換気では、基礎を切断して換気口を作るため、どうしてもその部分の基礎の強度が下がってしまいます。
また切断した換気口からクラックが発生しやすく、家の安全に影響を及ぼす「構造クラック」も発生しやすくなります。
ただし換気口からのクラックを防ぐため、最近では丸型の換気口を開ける方法も増えました。
丸型の換気口であれば、基礎の鉄筋を切断しないで施工できるので、基礎の強度が下がりません。
基礎の外周、どこからでも換気できるので、換気ムラがない。
基礎パッキンが優れているのは、換気能力です。基礎の外周、どこからでも換気できるのは大きなリットです。
床下の湿気は基礎の隅(コーナー)にたまりやすく、従来の基礎に換気口を開けるやり方では、どうしても換気ムラができてしまいます。
ですが基礎のどこからでも換気できる基礎パッキンなら、換気ムラがなく、床下の湿気をまんべんなく換気できるのです。
このメリットに加え、そもそもの換気能力の高さにあります。
基礎パッキンのトップメーカー「城東テクノ」の換気性能の試験では、従来の換気口よりも2倍の通気量だった、という試験結果がございます。
参考:換気性能
ただしこちらの試験結果は、昭和53年に建てられた築年数の古い物件との比較データです。
30年以上前の技術と比べれば、2倍以上の換気量は「そりゃ出るよな・・・」と思う気もします。
現代の丸型換気口を複数あける施工と比較したときの、換気量の差が気になるところです。
基礎パッキンのデメリット
メリットがあれば、デメリットもあるはず。
大手ハウスメーカーでも採用されることが増えた基礎パッキンには、どんなデメリットがあるのでしょうか?
「基礎パッキンだけで換気が十分か?」といえば、疑問が残る。
デメリットといいますか、「基礎パッキンだけで換気量は十分なのか?」という疑問の声がございます。
基礎パッキンにはスリットが入っているとはいえ、換気口のような大きな穴が開いているわけではありません。
そのため、
・基礎パッキンだけでは換気が足りない。
・基礎パッキンは風をあまり通さない。
・基礎パッキンは、床下の上の空気しか換気しない。
などのデメリットが指摘されています。(ただし学術的なソースはなし)
デメリットを言われると、「そ、そうなのか・・・」と暗い気持ちになりがちですが、ひとつ基礎パッキンをフォローするデータがございます。
住宅金融支援機構の「木造住宅工事の共通仕様書 平成15年版」には、床下換気に大切なこととして、
・床下のコーナー部に湿気がこもりやすい。コーナー部に換気口を設けるのは効果的。
・床下が常に乾燥している状態を保つには、換気口はできるだけ高い位置に取り付けること。
・換気口から雨水が侵入しないこと。
との指摘があります。
基礎パッキンは、これらを十分に満たしております。むしろ全周囲から換気できる基礎パッキンは、床下換気に効果的でございます。
設置して60年たって、樹脂が劣化したときのデータがない。
基礎パッキンの原料は、樹脂と無機質(炭酸カルシウムなど)を混ぜたものです。
メーカーの耐久力試験では、60年で0.001mmのずれとの予測であります。
しかし施工が普及してまだ新しいので、実際に60年使ってみたデータがない状況です。そのため、
「樹脂だから劣化するだろ?」
「劣化したら、やっぱ土台から崩れるんじゃないの?」
「基礎パッキン、やべーじゃん!」
と言われてしまうのです。
メーカーによる試験結果こそありますが、残念ながら歴史の浅い施工なので、現場での事例が不足しております。
ここ数年で大手ハウスメーカーでも採用されるようになったことを見ると、素材劣化に対する信ぴょう性が確保されてきたのかもしれません。
まとめ:基礎パッキンはあって困ることはない。
基礎パッキンのメリット・デメリットについて、あらためてまとめますと、
【基礎パッキンのメリット】
1・施工が簡単で失敗が少ない。
2・基礎を切らないので、強度が保てる。
3・基礎の外周、どこからでも換気できるので、換気ムラがない。
【基礎パッキンのデメリット】
1・基礎パッキンだけで換気が十分か?といえば、疑問が残る。
2・樹脂が実際に60年劣化したときのデータがない。
ということが言えます。
従来の四角形の換気口を開ける施工よりも、基礎パッキンの方がはるかに優秀なのではないでしょうか?
ただし「基礎パッキンだけで本当に大丈夫なの?」という裏付け(悪い事例)が乏しい状況なので、基礎パッキンだけでなく、丸型の換気口も併用するのも1つです。
築5年になりましたが、今のところ床下にカビ・シロアリはございませんよ。
素敵な住宅購入を。それでは、また!
▽大手ハウスメーカー・ローコストハウスメーカーの仕様を比較してみると、意外な発見がありますよ。
▽基礎・床下に関する記事は、こちら!